最後まで諦めない男 巻誠一郎
今を思えば期待と失望の連続だった。高さはあるものの,技術がない。チャンスはことごとく潰す。ポストどころか電柱にもならないこともあった・・・。でも決めるところは決めてくれた。
例えば入団1年目の03年1stステージ最終戦。首位にいながら,前節に大敗し,迎えたホームのREDS戦。たて続けに2点を取られて敗色濃厚の状態から,坂本のFKに体ごと投げ出して,ボールとともにネットに突っ込んだ。その刹那,自信のプロ初ゴールであるにもかかわらず,そのボールを持って一目散にセンターサークルに戻し,KICKOFFを促した。あのゴールは諦めかけていたチーム,そしてサポーターを生き返らせるのに充分なゴールだった。
そして05年の開幕戦。連携の悪さからGrampusに2点を献上。主力の大量流出から「今年は苦しくなりそうだ」と思わせた後半ロスタイム,滝澤のクロスにこれまた頭から突っ込む。ゴールポストに体を打ちつけながらもボールをねじ込み,引き分けに持ち込んだあのゲーム。あのゴールがあったからこそ,最後まで優勝争いに加わった形でシーズンを終えることができた。
この年,ゴールを2桁に積み重ね,「これだけやってんだから,日本代表で使ってほしい,でもジーコじゃ無理か」と思っていたら,代役という形であるものの自身初のA代表入りを果たした。その後の東欧遠征には呼ばれなかったが,年明けのアメリカ遠征で再召集。劣勢の中,これまた得意の頭でアメリカゴールをこじ開けた。
この頃から世間がザワザワし始める。巻,寿人,阿部,長谷部といった経験値の少ない若手が必死に頑張っているのに他はだらしがない,でもジーコは実績を重要視する,という世間の期待とジーコのギャップ。マスコミはこぞって巻と寿人をフィーチャーし始めた。これはもちろん,マスコミ的には悲劇の主人公を仕立て上げることで「オイシイ」部分をいただこうという狡猾な作戦だったはずだ。
そんな運命に逆らうかのように,巻はキリンカップでも自分ができることを一生懸命にやった。TVの街頭アンケートでは巻への支持がダントツだったところもあった。昨日のS-PULSE戦ではゲーム終了後にS-PULSEサポーターからの期待の声援ももらった。彼の一生懸命さは違うチームのサポーターをも動かした。
そして今日,運命の発表。あのジーコの巻き舌のような声から一番最後に「マァキ」と発せられた。サプライズはない,と踏んでいた記者達からの感嘆の声。その驚きは日本を越えてBBCのHPにも巻が写真入りで紹介された。「2006年FIFA WORLD CUPドイツ大会日本代表 巻誠一郎」の誕生だ。
もちろん,ドイツに観光しに行くわけではない。今のところ,FWでは5番目のようだが,柳澤は病み上がりだし,玉田はJリーグでも流れからのゴールがまったくない。出るチャンスは充分にある。
背負っているものも大きい。阿部,寿人,村井らの想い,肉親,そして日本中の期待。クロアチアは「オシムの愛弟子」として警戒を強めるだろう。それでもNHKの生放送で「利き足は頭」ってさらっと言っちゃう男だ。プレッシャーを感じずにサッカーを楽しんできてほしい。なぁに,予選で3敗したって堂々と帰ってこい。責任を取るのはサッカー協会であり,ジーコだ。巻らしいプレーを見せてくれればオレたちJEFサポは温かく迎えるよ。
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コメント
メール間に合って何よりですw
PACQUEさんほど巧みな文章ではないですが(爆笑)素直な思いをブログに更新何度もしては、追記し、またまた更新するつもりなのでよかったら覗いてやってくださいね!!
ドイツまで臨海魂ぶっ飛ばせ!!
投稿: 名古屋犬sete@わんちゃん | 2006/05/16 00:10
コメントありがとうございました☆初めましてです(^ω^)
実はこっそり覗かせていただいてました。
誰もがサプライズはないと思っていたところに巻の選出。
テレビの前で一人で大声を出してしまいました。
選ばれただけじゃなくて、ドイツのピッチで巻の最後まで諦めずに頑張る姿が見れるように祈るばかりです!!!
投稿: ちぃ | 2006/05/16 15:25
>わんちゃん
mail thanx.
素直な想いなら一発で書きましょう。それが「想い」ってもんですよ。
あと,あれは犬小屋ではなく,あくまでも「モオノキ」であることをお忘れなくwww。
>ちぃさま
こちらにもコメントありがとうございます。実はこちらもこれまでコッソリ覗いてました。
ドイツのピッチに巻が立ち,愚直にボールを追う姿を見たいですね。
投稿: PACQUE@管理人 | 2006/05/17 00:44